作品概要 平田オリザ率いる劇団「青年団」による新しい試み「若手自主公演」の最初の作品として上演された。当初俳優として青年団に入団した三浦基は、この作品以降しばらくの間、青年団演出部に所属しながら作品を発表していく。尚、京都芸術センターからの委託で、三浦は再びこの『海と日傘』を2003年に演出することになる。

 

 

1997  
日程・会場
1997.8.26-27 こまばアゴラ劇場(東京)
 
松田正隆
演出 三浦基
出演 小河原康二
兵藤公美
秋山建一
木崎友紀子
松井周
川隅奈保子
安田まり子
大木透
端田新菜
近藤圭子
スタッフ 美術:秋山建一
照明:西本彩 角舘玲奈
音響:神原直美
ビデオ撮影:小口宏
写真撮影:坂田峰夫
方言指導:日野原君映 石突尚子
制作:赤剥泰子 高橋縁
総合制作:平田オリザ
協力 (有)アゴラ企画

 

 

『海と日傘』上演について

はじめに言ってしまいますが、この演劇では一人の女が死にます。早くも一場で倒れ、二場から病床に伏し、後はそれまでのいくつかの時間を経ながら、普段の生活が描かれてゆきます。「待つ」という行為が、演劇にとって大きなドラマを担うというのは周知のことですが、この作品も例外ではありません。すなわち死を待っています。こう書くとなにやらベケット作品のような印象を与えますが、この作品の人物は、能動的に待つというか(決してベケット作品が受動的というわけではないのですが)生きることにとても執着しているようです。ここに私は賭けてみました。つまり、生きることと死ぬことがすぐそこにあるということを表現にしてみようと思ったのです。
ところで、この戯曲には女の病名は記されていません。私は特に気にしていなかったのですが、私の配役した女優があまりに丸顔なため、プロデューサーの平田は、あれはおたふく風邪をこじらせて死ぬ、とひそかにふれまわっていたようです。ま、おたふく風邪で死ねるかどうかはあまり真剣に考えたくないのですが、いずれにせよ、この作品がそういうあぶない橋を渡らないと現代演劇として成立しないのは確かなようです。それにしても演出家として初作品を発表するのに、まったくもって相手に不足はないのでした。 最後に「せりふは現場で変容してゆくものだ」という考えのもとに、台本の書き換えについて快く承諾してくださった作者の松田氏に感謝します。

1997年7月 三浦基

出典:当日パンフレット