作品概要 『誰も、何も、どんな巧みな物語も』から続く、ダンサー・山田せつ子との共同作業、最終地点へ。使用テキストをジュネの書いた殆ど唯一の演劇論『……という奇妙な単語』に限定し、言葉と身振りの実験を継続した。本作より、三浦基は演出ではなく監修として参加、パフォーマンスとトークの二部構成とし、毎公演ゲストを迎えてのポストトークを行った。

 

 

 

撮影:青木司

 

2011  
日程・会場
2011.8.31-9.4 シアタートラム
 
テクスト ジャン・ジュネ
翻訳・構成 宇野邦一
監修 三浦基
出演 安部聡子
山田せつ子
トークゲスト 鵜飼哲(フランス文学)
香山リカ(精神科医)
杉山至(舞台美術家)
楯岡求美(ロシア演劇・文化論)
やなぎみわ(美術作家)
スタッフ 舞台監督:原口佳子
照明:森規幸
衣裳:片山公美
宣伝美術:納谷衣美
制作:田嶋結菜
制作協力:NPO法人魁文舎 枇杷系 外山りき
システム提供:シバイエンジン
  京都芸術センター制作支援事業
主催 合同会社地点
助成 芸術文化振興基金 EU・ジャパンフェスト日本委員会
提携 公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
後援 世田谷区

 

 

安部聡子と山田せつ子で演劇とダンスの共生というものができると思って、これまでもこの企画は上演を重ねて来ました。しかし、この度、私はギブアップしたい。演劇とダンスとは、言葉と身振りと言い換えてもよろしいが、これをひとつの舞台にまとめるということは、まずもって難題なのでした。それは儚い夢でした。舞台人はこの夢を追い求める傾向にあり、私は心を鬼にしてもうやめようと二人に告白したのですが、やめないと言うのです。ひとつにまとめるなんてことをそもそも演出だとするなんて、横暴だと言うのです。確かに、これまで私が作品という概念で縛られていたことをこの二人は、もう少し緩やかに考え始めているようです。そしてやはり言葉と身振りのことは21世紀問題であることは明白なので、それを見ないふりはできないと反省しました。だから一応、目を背けずに見てはみることにしました。そして感想も一応、言うことにしました。二人はこのような演出の降板劇に目を輝かせています。儚い夢かもしれませんが、最後のチャンス。どうぞご理解、応援の程、よろしくお願いします。

三浦 基

出典:チラシ
俳優の思惑、などというものはひとたび舞台に立てばたちまち見透かされてしまうのであって、わざわざ書き残して発表するなんぞの愚の骨頂ではありますが、今回はどうも敢えてそれをやらなくてはならない。有言実行の義務を自分に課した私、俳優・アベ、以下Aと称します。
「スランプの時こそ身体の進化と技術向上のチャンスである。」とは野球の長嶋茂雄さんの言葉でしたか。さすがに寝食を忘れての素振り稽古はできませんが、この先、地点が現代演劇の金字塔を打ち立てて生き延びて行くためには、Aにとって進化するための荒療治が必要だと思い、この共同作業を続けたいと願いました。
Aの到達目標はY、ダンサー・山田せつ子との共演によるミラクルな時間の創造です。どうしても長嶋さんに引っ張られますが、何故ですかね。何が飛び出すかわからないことばの意外性に惹き付けられるのでしょうか。スピード感の妙もあるのですかね。
とにかく、Aの仕事で重要な事はテキストの言葉を観客席にそして猛烈に生きる死骸Yにきちんと届けることだと肝に銘じてます。言葉が死骸に届けばミラクル。そこは祈りと闇が許される墓場になるかもしれない。あわよくばAはお喋りな死骸になってみよう!

安部聡子

出典:当日パンフレット