作品概要 KAAT神奈川芸術劇場との共同制作作品第4弾。地点初の長編小説の舞台化は、しんしんと降りしきる雪、横長にしつらえた舞台を愚直に走り続けることから始まった。オーディションを経て参加した3名の俳優、ベルギーから参加した衣裳家のコレット・ウシャール、そして何より、原作者のドストエフスキー、新しい出会いに満ちた作品となった。

 

 

 

撮影:松本久木

 

 

2014  
日程・会場
2014.3.10-23 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
 
原作 フョードル・ドストエフスキー
翻訳 江川卓
演出 三浦基
出演 安部聡子
石田大
小河原康二
岸本昌也
窪田史恵
河野早紀
小林洋平
永濱ゆう子
根本大介
スタッフ 空間構成:木津潤平
衣裳:コレット・ウシャール
照明デザイン:山森栄治 (KAAT神奈川芸術劇場)
照明オペレート:大島真(KAAT神奈川芸術劇場)
音響デザイン:徳久礼子 (KAAT神奈川芸術劇場)
音響オペレート:稲住祐平(KAAT神奈川芸術劇場)
衣裳スーパーバイザー:阿部朱美
衣裳制作:篠原直美 井上美佐子 藤田恭子
舞台監督:小金井伸一(KAAT神奈川芸術劇場)
プロダクション・マネージャー:安田武司(KAAT神奈川芸術劇場)
技術監督:堀内真人 (KAAT神奈川芸術劇場)
宣伝美術・WEB:松本久木 (MATSUMOTOKOBO Ltd.)
制作:伊藤文一 (KAAT神奈川芸術劇場)小森あや 田嶋結菜
広報:井上はるか 久田絢子 (KAAT神奈川芸術劇場)
営業:大沢清 吉山久美子 (KAAT神奈川芸術劇場)
主催 KAAT神奈川芸術劇場 (指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
助成 平成25年度文化庁劇場・音楽堂活性化事業
EU・ジャパンフェスト日本委員会
  KAAT神奈川芸術劇場×地点 共同制作作品

 

 

友人があるときこっそりと私に言った。「ここ数年、選挙のあとは街ですれ違う人はもちろん、目の前の知っている奴まで憎たらしくてしょうがなくなる」。彼には、選挙結果が自分の思うものとはかけ離れていることに加えて、だいたい投票率が低いことも憎たらしいらしい。「目の前の知っている奴」である私までも憎たらしいと思われているのかもしれないと思ったら、彼の顔を見るのをちょっと躊躇したことを覚えている。しかし、私もそうだったが人はだいたいがこういう時、「俺もそう思う」と言うだろう。なぜならば、相手はそもそも同意を求めるからこそ、それが許されていると思うからこそ、このような告白を口にしているのだから。何よりも彼は私にとっていい奴で、愛すべき人間だ。他愛のない世間話だが、話題が選挙だけに、ひと昔前だと私と友人は「同志」ということになる。気がついたら「共闘」している。しかし、所詮、彼の顔を見るのに躊躇したくらいの私だから、やがて彼の疑心を招くだろう。それが誤解かもしれないのに、こんなにいい奴だと思っているのに、今でも愛しているのに、裏切りはやってくる。「挫折」だ。私たちはすでに妄想の中で挫折している。およそ150年前のロシアでこの妄想に取り憑かれた人々がいる。彼らは私の友人だ。当然、私は彼らの顔を正面から見ることができない。この大きな躊躇が私の『悪霊』なのです。

三浦 基

出典:当日パンフレット