作品概要 揺り椅子、あるいは木馬に身を委ねる登場人物たち。揺れ動く心理、沈黙に秘められた思惑……短い言葉のやり取りが物語を加速させる。着物をリメイクし、細部まで作り込まれたコレット・ウシャールの衣裳、紛失した未発表原稿が次第に散乱していく青白い舞台の美しさが、悲劇を彩る。2017年読売演劇大賞作品賞受賞作。

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撮影:松見拓也

 

 

2016  
日程・会場
2016.11.22-23   あうるすぽっと
 
2017  
日程・会場
2017.5.5-13, 6.30-7.3, 12.13-16   アンダースロー
 
ヘンリック・イプセン
翻訳 毛利三彌
演出 三浦基
出演 安部聡子
石田大
小河原康二
窪田史恵
河野早紀
小林洋平
スタッフ
美術:杉山至
衣裳:コレット・ウシャール
衣裳製作:薦田恭子
照明:藤原康弘
音響:堂岡俊弘
舞台監督:大鹿展明
制作:田嶋結菜
主催・企画制作 特定非営利活動法人舞台21(2016年)
合同会社地点(2017年)
共同制作 特定非営利活動法人舞台21(2017年)

 

審査評 みなもとごろう
 自由な青春時代をおくったヘッダ・ガブラーは、平凡な学者テスマンとふとした物欲がもとで結婚する。三浦の「ヘッダ・ガブラー」は、原作を大胆に変換した「ヘッダ・テスマン」という夫の姓を付けた呼びかけから始まる。そこで、主題が見事に浮かび上がる。以後、彼女は様々の呼び方をされるが、それはアイデンティティの喪失の反映である。一旦自己を見失えば、支配・被支配の苛酷な関係性から逃れえない。現代の情況と見事に照応する舞台である。
 「桜の園」は、従来の信条に拘泥する有産階級、個人の才覚を誇る新興商人、貧富のない社会を夢見る知識階級の三者の思いを、互いに切なく描く。一方で、この三者の連帯を分断する貨幣の山(拝金主義の象徴)を築いて、ロシア革命の成功とその崩壊との必然を見事に俯瞰する。
 三浦の演出は、物語を解体して一見難解だが、虚心に接すれば古典絵画の裸体に加えられたイチジクの葉を除去するように、時代の壁を乗り越える明快なものである。
 
2017年2月4日 読売新聞朝刊