2018/05/30 Category:

アンダースロー チケット料金改定のお知らせ

 

 

メンバーが、足りない。
アンダースロー チケット料金改定のお知らせ〜次なる5年間を迎えるにあたって

 
 
京都で過ごす春も今年で14回目になりました。〈10年一区切りの遊び〉と言って始めたアンダースローもこの夏で5周年を迎えます。早いものです。
 
この間、カルチベート・プログラムの実施や雑誌『地下室』の発行など、当初は思いもよらなかった展開がありました。また、ロシアやドイツの劇場文化に触発された独自のレパートリーシステムの実現により、劇団のあり方自体大きく変化したと感じています。
 
そのような活動を通して、これまでに勇気づけられたこと、直面した壁はさまざまですが、2018年春から夏へ向かおうとしているこの5月に、地点はひとつのある具体的な夢を持つにいたりました。それは「チェーホフの『三人姉妹』をレパートリーとすること」です。
 
『三人姉妹』は京都移転前から三浦基の代表作でした。地点とチェーホフの出会いの作品でもあり、2015年には新演出で上演、成功をおさめました。この作品はオリガ、マーシャ、イリーナの三姉妹と兄弟のアンドレイ、その妻のナターシャ、マーシャの夫クルイギン、そして軍人のヴェルシーニン、トゥーゼンバフ、ソリョーヌイ、最低でも9名の出演者がいなければ上演不可能な演目です。
 
ご存知のように地点は全員野球をモットーとする劇団。登場人物が20名以上いるシェイクスピアの『コリオレイナス』(2012年上演)でさえ、当時所属する5名の俳優で演じきり、グローブ座に集まった観客を驚かせました。そう考えると、9名いないと上演できないと思うということ自体、『三人姉妹』という演目が私たちにとっていかに特別かという証なのだと思います。
 
共に活動する俳優と出会うこと。2015年版の『三人姉妹』を上演できるようなアンダースローよりもひとまわり大きい劇場を探すこと。夢の実現に向けて、新たな歩みが始まります。
 
さて。世の常として、その最初の壁として立ちはだかるのはやはり資金的な問題です。レパートリー制の維持のためには所属俳優の専業化が条件となります。日本の多くの劇団は必ずしもそうではないということを知りながら、やはり作品の質の向上・保証と恒常的な活動によるプログラムの充実を考えた際に、これは絶対条件なのではないかと考えるようになりました。開場当時5名だった俳優を最大9名まで増やすにあたって、これまでアンダースローで導入してきた2000円の一律料金を見直さなければならないのではないかと思うに至りました。
 
2000円の定額制は映画館に憧れがあったためです。現代演劇に触れること自体チャンスが限られるという、必ずしも豊かとは言えない文化状況において、できる限り「最初の観劇」の垣根を低くしたいという思いもありました。しかし、残念ながら、2000円から3000円にチケット料金を値上げせざるを得ないのではないか、というのが私たちの結論です。ただし、学生は2000円に据え置き、さらにカルチベートチケットも使用者を学生に限ることなく、2000円に据え置き致します。
 
ここで気づかれた方はいますでしょうか。カルチベートチケットは据え置き2000円、しかも誰でも使える、ということは……? 来場者が観劇の際にカルチベートチケットを使用し、帰り際に誰もが2000円でカルチベートチケットを買って帰る、それがくり返されれば……。アンダースローのチケット料金は今まで通りの2000円ということが理論上は成立することになります。
 
「メンバーが、足りない。」は2005年の骨髄バンク登録推進のキャッチコピーです。当時、三浦基を含め東京から5名でやってきた私たちは、京都芸術センターに掲出されたこのポスターを見て、まるで自分たちのことみたい、と笑っていました。それから13年が経ち、私たちは再びメンバーを募ることになりましたが、それは地点という劇団内部に限ったことではないのかもしれません。
 
多くの観客がアンダースローに集い、共に演劇を見続けるーー次なる5年をそんなふうに夢見ています。どうかチケット料金改定にご理解賜りますよう、そして今後もご来場くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。
 
 
地点 制作 田嶋結菜