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勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。
覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。
カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。
つまり、愛するという事を知る事だ。

全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。
これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。
そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。
ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!


太宰治『正義と微笑』より


 
2014年、2015年に実施したカルチベート・プログラム。「新たな鑑賞者を開拓するための試み」という名目で、文化庁からの委託事業として行ったものでした。ところが2016年度以降、この助成金の枠組み自体がなくなってしまい、予算獲得の目処が立たないまま、昨年は開催を見合わせたという経緯があります。
過去2回の開催が、新たな観客とのよき出会いの場として機能していたことは確かで、特にプログラム修了後にまとめられる報告エッセイ集は、観客が一人一人の個人として立ち現れてくる様子が感動的でさえあり、なんとかプログラムを継続する方策はないものかと探ってきました。
資金が確保できたわけではないのですが、今年はプログラムの再開を心に決めました。少しばかりの規模縮小は大目に見ていただくとして、もっともっと演劇が見たい、という皆さんからのご応募を今年もお待ちしております。また、プログラムの参加者以外の方も、公演はもちろん、アフタートークやレクチャーを観客として楽しめる仕掛けになっておりますので、どうぞこの機会にアンダースローにお越しいただければ幸いです。
                                                                                                                   (地点 制作・田嶋結菜)


内容
・アンダースローで8月25日〜11月26日までに上演される7本の公演をすべて観劇し、レクチャーを受講する(観劇及び受講は全て無料)
・修了後、報告エッセイを書く(エッセイは冊子にまとめる予定です)

対象(一つ以上にあてはまること)
・芸術に興味がある人
・演劇の見方を知りたい人
・観客、俳優、スタッフとして演劇に関わりたい人
・舞台作品をとにかくたくさん見たい人
・現代演劇について学びたい人
・アートマネージメント全般に興味がある人
・アートスペースの運営に興味がある人
・劇団に興味がある人
・批評やジャーナリズムに興味がある人

条件
・7作品すべてを観劇し、レクチャーに参加できるよう計8日間のスケジュール調整ができること
・修了後、報告エッセイを書くこと

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申込方法
下記の書類を添えて郵送もしくはEメールでお申込みください。(書式自由)
①申込書(氏名、年齢、所属もしくは職業、住所、メールアドレス、携帯電話番号)
②自己紹介、応募理由、本プログラムに期待することなどをまとめた文章(400〜800字程度)
定員:20名 応募多数の場合は選考を行います。
応募締切:2017年8月14日(月)必着
選考結果は2017年8月17日(木)までに応募者全員に通知します。

お申込み・お問合せ
合同会社地点 606-8266 京都市左京区北白川久保田町64-22
Tel. 075-888-5343 Fax. 075-888-5344
e-mail. info@chiten.org



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7本の作品

各演目とも、一日を選んで観劇できます。また、公演期間中には本プログラムの関連イベントとしてアフタートークが各演目につき一度ずつ開催されます。

*プログラム受講者も一般の観客と同じく、観劇日時が決まったらその都度予約が必要です。トークのある回など、人気のある回でも、プログラム受講者が優先される訳ではありませんのでご留意下さい。
 

1 桜の園 

作:アントン・チェーホフ 翻訳:神西清 

「桜の園」と讃えられる美しい庭を持つ屋敷。贅沢と浪費の末に借金の抵当に入った屋敷を取り戻そうともがく女主人ラネーフスカヤは、しかし、商人ロパーヒンの別荘建築案に賛成できない。山と積まれた窓枠は売り払われた屋敷の形見であり、ビジョンの残骸でもある。古い価値観に縛られ、置き去りにされる人間と、新しい制度の中でも決して充足を得ることのできない不安な存在としての人間を描いたチェーホフの遺作。

日程:2017年
8月25日(金)19:30★
8月26日(土)20:00
8月27日(日)20:00
8月28日(月)20:00
上演時間:約85分

★=トークあり
ゲスト:中村唯史(ロシア文学・ソ連文化論)
1965年北海道生まれ。京都大学文学研究科教授。編著に『再考ロシア・フォルマリズム』、『映像の中の冷戦後世界』、『ロシアの南』、『今、ソ連文学を読み直すとは』他。翻訳にトルストイ『ハジ・ムラート』、バーベリ『オデッサ物語』、グロスマン『トレブリンカの地獄』、ペレーヴィン『恐怖の兜』他。

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2 CHITENの近未来語

使用テキスト:今日の新聞(朝日新聞日刊)、小松左京『さよならジュピター』、『果しなき流れの果に』、『神への長い道』、『戦争はなかった』、『こちらニッポン…』

作品の半分が本番当日の朝刊、半分が小松左京によるSF小説という異色のコラージュ作品。はるか未来や何億光年も先の星々に思いを馳せるSFの想像力と、昨日・今日・明日という日常の時間軸を交錯させることで、宇宙から日本の「今」を見つめる。9月9日〜12日の上演は、いわゆる「お気持ち会見」のあった翌日の新聞を使用し、繰り返しの上演を前提とした特別版の上演となる。

日程:2017年
9月5日(火)20:00
9月6日(水)20:00★
9月7日(木)20:00

9月9日(土)20:00※
9月10日(日)20:00※
9月11日(月・祝)20:00※
9月12日(火)20:00※
※2016年8月9日の新聞を使用した特別版
上演時間:いずれも約65分


★=トークあり
ゲスト:家成俊勝(建築家・dot architects)

1974年兵庫県生まれ。京都造形芸術大学准教授。04年、赤代武志とドットアーキテクツを設立。大阪・コーポ北加賀屋を拠点に活動。代表作にUmaki Camp(2013、小豆島)など。第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2016)にて審査員特別表彰を受賞(日本館出展作家)。

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3 かもめ

作:アントン・チェーホフ 翻訳:神西清

大女優のアルカージナは恋人で人気作家のトリゴーリンを伴って湖畔の屋敷に戻ってきている。革新的な作家になることを志す息子のトレープレフ、女優を夢見るその恋人ニーナ。若いふたりによる劇が仮設舞台で上演される。トレープレフに片思いするマーシャ、マーシャに求婚しているメドヴェージェンコの姿もそこにはある――。アンダースロー版の『かもめ』では、開場中のティーサービスとニーナによる劇の解説も見どころの一つ。

日程:2017年
9月20日(水)20:00
9月21日(木)20:00
9月22日(金)19:30★
9月23日(土)20:00
上演時間:約80分

★=トークあり
ゲスト:鈴木卓爾(映画監督・俳優・脚本家)
1967年静岡県生まれ。東京造形大学卒業後、『私は猫ストーカー』(09年)で長編劇場映画初監督。ほか主な作品に『ゲゲゲの女房』(10年)、『ジョギング渡り鳥』(16年)など。俳優としても市川準監督『トキワ荘の青春』(96年)、黒川幸則監督『VILLAGE on the VILLAGE』(16年)など多数出演。
 
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4 ブレヒト売り

使用テキスト:
ベルトルト・ブレヒト『ゼチュアンの善人』『マハゴニー市の興亡』『屠場の聖ヨハンナ』『バール』『ガリレイの生涯』『大洋横断飛行』『ハッピー・エンド』『亡命者の対話』ほか
 
神・金・愛・戦争・芝居というテーマ別にブレヒトの20以上の戯曲・詩から言葉を抜粋したコラージュ作品。何かを希求すればするほど、矛盾のただ中に突進してしまう人間の姿が、ブレヒトの挑発的な言葉のなかにくっきりと浮かびあがる。音楽を担当するのはシェイクスピア作『コリオレイナス』以来、再びの共同作業となった桜井圭介。軽快なリズムトラックにのせておくる音楽劇!

日程:2017年
9月27日(水)20:00
9月28日(木)20:00
9月29日(金)20:00
9月30日(土)20:00★
上演時間:約65分

★=トークあり 
ゲスト:篠田千明(演出家・作家・イベンター)
1982年東京都生まれ。多摩美術大学の同級生らと「快快」を結成し、12年の脱退まで中心メンバーとして演出・脚本・企画を手がける。以後、タイ・バンコクを拠点にソロ活動を展開。劇の成り立ちそのものを問う作品『四つの機劇』『非劇』などを発表。16・17年度公益文化財団セゾン文化財団ジュニアフェロー。
 
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5 汝、気にすることなかれ

作:エルフリーデ・イェリネク 翻訳:谷川道子 音楽:三輪眞弘

『光のない。』『スポーツ劇』に続く地点のイェリネク劇第三弾。全篇にわたって展開されるのは「目標を持たず、ただ自分自身の掌握という目標の達成だけを目指している一つの権力によって遂行されている戦争」から身をよじって逃げようとする人間の姿。この人間たちの姿に山や道や家や国までもが重ねて描かれるところがイェリネク戯曲の凄まじいところです。長大なテキスト相手にスペクタクルを封印したら、そこには抱腹絶倒の世界が出現!? 
 
日程:2017年
10月13日(金)20:00
10月14日(土)20:00
10月15日(日)20:00
10月16日(月)20:00★
上演時間:約70分

★=トークあり
ゲスト:塚原悠也(アーティスト)
1979年京都府生まれ。06年、垣尾優と共に大阪にてcontact Gonzoを結成。肉体の衝突を起点とする独自の牧歌的崇高論を構築し、即興的なパフォーマンス作品や、映像・写真作品を制作。国内外のフェスティバルや、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする多くの美術館で作品を発表している。

6 どん底


作:マキシム・ゴーリキー 翻訳:神西清 音楽:空間現代

人間は自由……! 何をしたって勘定は自腹……! 抜け出すことのできない貧困と絶望の底で人々は酒を飲み、歌を歌う。病人は死に、巡礼者がどこへともなく去り、役者は自殺するが、宿の人々は終わりなき日常を生き続けなければならない。ゴーリキーの代表作にして社会主義リアリズムの金字塔に地点×空間現代が挑む、アンダースロー最新作。

日程:2017年

11月9日(木)20:00
11月10日(金)20:00
11月11日(土)20:00

11月13日(月)20:00★
11月14日(火)20:00
11月15日(水)20:00

11月17日(金)20:00
11月18日(土)20:00
11月19日(日)20:00
​上演時間:未定

★=トークあり
ゲスト:楯岡求美(ロシア文化・ロシア演劇)
1967年東京都生まれ。東京大学文学部准教授。主な論文に「メイエルホリドの演劇性―チェーホフ、コメディア・デラルテとの出会い」「ナルキッソスの水に映る街―劇場都市ペテルブルグ」「演劇における感情の伝達をめぐって―スタニスラフスキー・システム形成過程についての一考察」他。

7 CHITENの近現代語

 

使用テキスト:大日本帝国憲法(御告文・憲法発布勅語・本文)、朝吹真理子『家路』
玉音放送(終戦の詔勅)口語訳、日米記者クラブ公式記者会見記録(1975年10月31日)、別役実『象』、『犬養木堂氏大演説集』、F.カフカ『彼』、日本国憲法前文
 
日本の近代の始まりから終わり。すなわち大日本帝国憲法の制定から敗戦を経て日本国憲法の発布に至るまでを文体も用途もバラバラな言葉をコラージュすることによって描く。原爆投下、玉音放送、繰り返される夏ーー。様々なテキストをつなぎ合わせているのは、観客に共有されている日本の近現代史。


日程:2017年

11月23日(木・祝)20:00
11月24日(金)20:00★ 
11月25日(土)20:00 
11月19日(日)20:00
​上演時間:約60分

★=トークあり
ゲスト:梅山いつき(アングラ演劇研究)

1981年新潟県生まれ。早稲田大学演劇博物館で現代演劇に関する企画展を手がけ、現在、近畿大学文芸学部講師。アングラ演劇のポスター、機関誌をめぐる研究や、野外演劇集団にスポットを当てたフィールドワークを展開。著書に『アングラ演劇論』(作品社、AICT演劇評論賞受賞)など。

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レクチャー

カルチベート宣言〜芸術なしでは生きられない

報告エッセイを書く前に、プログラム全体を振り返って疑問や感想を共有し、深める場を持ちます。批評という立場から演劇を見つめてきた森山直人氏を迎え、見ることと書くこと、感じることと言葉にすることについて語ります。

日時:2017年11月26日(日)14:00〜17:00

登壇者:森山直人(演劇批評家)
1968年東京生まれ。京都造形芸術大学芸術学部舞台芸術学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員、及び機関誌『舞台芸術』編集委員。KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)実行委員長。著書に『舞台芸術の魅力』(共著、放送大学教育振興会)など。

レクチャーはカルチベート・プログラム参加者以外の方も受講可能です。
地点WEBよりお申込みください。定員あり。参加費:500円/回
*2017年9月30日(土)より受付開始

カルチベート・プログラム2014 culpro2017_banar_2015_01.pngカルチベート・プログラム2014 報告エッセイ集