アンダースロー
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勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。
覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。
カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。
つまり、愛するという事を知る事だ。
全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。
これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。
そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。
ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!
太宰治『正義と微笑』より
アンダースローでは昨年に引き続き「カルチベート・プログラム」を開催し、参加者を募集いたします。
本プログラムは、およそ4ヶ月の間に地点によるレパートリー作品6本とゲストパフォーマンス2本をまとめて鑑賞し、参加者がテキスト(主題・文体・歴史的背景)、空間造形、演技、演出といった劇の構成要素をそれぞれ個別に把握できるようになることで、総合的に舞台作品を見る技術を獲得し、観劇の楽しみを個々人が発見することを目的としています。
内容
・アンダースローで上演される合計8本の公演をすべて観劇し、2回のレクチャーを受講する(観劇及び受講は全て無料)
・修了後、報告エッセイを書く(エッセイは冊子にまとめる予定です)
対象(一つ以上にあてはまること)
・芸術に興味がある人
・演劇の見方を知りたい人
・観客、俳優、スタッフとして演劇に関わりたい人
・舞台作品をとにかくたくさん見たい人
・現代演劇について学びたい人
・アートマネージメント全般に興味がある人
・アートスペースの運営に興味がある人
・劇団に興味がある人
・批評やジャーナリズムに興味がある人
条件
・8作品すべてを観劇し、2回開催されるレクチャーに参加できるよう計10日間のスケジュール調整ができること
・修了後、報告エッセイを書くこと
申込方法
下記の書類を添えて郵送もしくはEメールでお申込みください。(書式自由)
①申込書(氏名、年齢、所属/職業、住所、メールアドレス、携帯電話番号)
②自己紹介、応募理由、本プログラムに期待することなどをまとめた文章(400〜800字程度)
定員:40名 応募多数の場合は選考を行います。
応募締切:2015年5月27日(水)必着
選考結果は2015年6月1日(月)までに応募者全員に通知します。
お申込み・お問合せ
合同会社地点 606-8266 京都市左京区北白川久保田町64-22
Tel. 075-888-5343 Fax. 075-888-5344
e-mail. info@chiten.org
文化庁委託事業「平成27年度文化庁戦略的芸術文化創造推進事業」
主催:文化庁、合同会社地点
制作:合同会社地点
6+2本の作品
各演目とも、一日を選んで観劇できます。また、公演期間中には本プログラムの関連イベントとしてアフタートークが各演目につき一度ずつ開催されます。
*プログラム受講者も一般の観客と同じく、観劇日時が決まったらその都度予約が必要です。トークのある回など、人気が高い回でも、プログラム受講者が優先される訳ではありませんのでお気をつけ下さい。
6本のレパートリー
1 ファッツァー
作:ベルトルト・ブレヒト 翻訳:津崎正行 音楽:空間現代
戦車と機関銃の登場で大量殺戮が可能になった第一次世界大戦中。塹壕から逃げ出した脱走兵ファッツァーと仲間たちは地下室に潜伏し、革命が起こって戦争が終わるのを待つ。しかし、結末に待つのは団結の失敗と死ーー。絶望的な話にも関わらず、ブレヒト流の諧謔と笑いに満ちた、不思議な魅力をもったテキスト。大音量の迫力で繰り出される空間現代の音楽もこの作品には欠かせない要素の一つです。
日程:2015年
6月12日(金)20:00
6月13日(土)20:00
6月14日(日)20:00
6月15日(月)20:00★
上演時間:約65分
★=トークあり
ゲスト:宮永愛子(美術家)
1974年京都生まれ。日用品をナフタリンでかたどったオブジェや塩を使ったインスタレーションなど、気配の痕跡を用いて時を視覚化する作品で注目を集める。2013年「日産アートアワード」初代グランプリ受賞。主な展覧会に「宮永愛子:なかそらー空中空ー」国立国際美術館(2012年)など。
2 ワーニャ伯父さん
作:アントン・チェーホフ 翻訳:神西清
2007年より〈地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演〉シリーズに取り組み、長年チェーホフ劇を上演してきた地点。シリーズ中、もっとも上演回数の多いのがこの『ワーニャ伯父さん』です。一台のグランドピアノを配したシンプルな舞台。中央には鳴らないピアノから下りることのできないワーニャとソーニャ。何のために苦しみながら生きるのか。百年、二百年先の人類の幸福と、重くのしかかる日常の倦怠を問う、辛辣で滑稽な物語。
日程:2015年
6月20日(土)20:00
6月21日(日)20:00
6月22日(月)20:00
6月23日(火)19:30★
上演時間:約95分
★=トークあり
ゲスト:太田直子(映画字幕翻訳者)
1959年広島県生まれ。天理大学外国語学部ロシア学科、早稲田大学大学院で学ぶ。これまで1000本以上の映画字幕翻訳を手がける。著書に『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』(岩波書店)、『ひらけ!ドスワールド 人生の常備薬ドストエフスキーのススメ』(AC Books)など。
3 CHITENの近未来語
使用テキスト:今日の新聞(朝日新聞日刊)、小松左京『さよならジュピター』、『果しなき流れの果に』、『神への長い道』、『戦争はなかった』、『こちらニッポン…』
アンダースローのオープニング作品として制作された衝撃作再び。本番当日の朝刊と小松左京によるSF小説をコラージュするという奇想天外な発想のもと制作された。はるか未来や何億光年も先の星々に思いを馳せるSFの想像力と、昨日・今日・明日という日常の時間軸を交錯させることで、宇宙から日本の「今」を見つめてみようという試み。
日程:2015年
6月30日(火)20:00
7月1日(水)20:00
7月2日(木)20:00
7月3日(金)20:00★
上演時間:約65分
★=トークあり
ゲスト:吉岡洋(京都大学大学院文学研究科教授)
1956年京都生まれ。専門は美学芸術学、情報文化論。著書に『情報と生命』(新曜社)、『思想の現在形』(講談社)他。批評誌「Diatxt.」(京都芸術センター2000-2003)編集長、「京都ビエンナーレ2003」ディレクターなどを務める。
4 CHITENの近現代語
使用テキスト:大日本帝国憲法(御告文・憲法発布勅語・本文)、朝吹真理子『家路』、玉音放送(終戦の詔勅)口語訳、日本記者クラブ公式記者会見記録(1975年10月31日)、別役実『象』、『犬養木堂氏大演説集』、F.カフカ『彼』、日本国憲法前文
日本の近代の始まりから終わり、すなわち大日本帝国憲法の制定から敗戦を経て日本国憲法の発布に至るまでを、文体も用途もバラバラな言葉をコラージュすることによって描いた問題作。原爆投下、玉音放送、毎年めぐってくる終戦の季節……。様々なテキストをつなぎ合わせているのは、観客に共有されている日本の歴史。上演し続けたい地点の〈隠れた名作〉。
日程:2015年
7月10日(金)20:00
7月11日(土)20:00
7月12日(日)20:00
7月13日(月)20:00★
上演時間:約60分
★=トークあり
ゲスト:白井聡(京都精華大学人文学部教員)
1977年東京都生まれ。専門は政治学・社会思想。レーニンの政治思想をテーマとした研究を手掛ける。2013年、『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)により、第4回いける本大賞、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。著書に『未完のレーニン』(講談社)、『「物質」の蜂起をめざして』(作品社)など。
5 かもめ
作:アントン・チェーホフ 翻訳:神西清
大女優のアルカージナは恋人で人気作家のトリゴーリンを伴って湖畔の屋敷に戻ってきている。革新的な作家になることを志す息子のトレープレフ、女優を夢見るその恋人ニーナ。若いふたりによる劇が仮設舞台で上演される。トレープレフに片思いするマーシャ、マーシャに求婚しているメドヴェージェンコの姿もそこにはある――。アンダースロー版の『かもめ』では、開場中のティーサービスとニーナによる劇の解説も見どころの一つ。
日程:2015年
8月29日(金)20:00
8月30日(土)20:00
8月31日(日)19:30★
9月1日(月)20:00
上演時間:約80分
★=トークあり
ゲスト:吉田大八(映画監督)
1963年生まれ、鹿児島県出身。2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画監督デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待される。4作目『桐島、部活辞めるってよ』(12)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。最新作は『紙の月』(14)。
6 桜の園
作:アントン・チェーホフ 翻訳:神西清
「桜の園」と讃えられる美しい庭を持つ屋敷。贅沢と浪費の末に借金の抵当に入った屋敷を取戻そうともがく女主人ラネーフスカヤは、しかし、商人ロパーヒンの別荘建築案に賛成できない。山と積まれた窓枠は売り払われた屋敷の形見であり、ビジョンの残骸でもある。古い価値観に縛られ、置き去りにされる人間と、新しい制度の中でも決して充足を得ることのできない不安な存在としての人間を描いたチェーホフの遺作。
日程:2015年
9月10日(木)20:00
9月11日(金)19:30★
9月12日(土)20:00
9月13日(日)20:00
上演時間:約85分
★=トークあり
ゲスト:姫野希美(赤々舎代表取締役、ディレクター)
2006年、写真集・アートブックを専門に出版する赤々舎を設立。主な写真集に第33回木村伊兵衛写真賞の志賀理江子『CANARY』、第35回同賞の浅田政志『浅田家』、第40回同賞の石川竜一『絶景のポリフォニー』など。赤々舎は2013年梓会出版文化賞特別賞受賞。
演出:三浦基/出演:安部聡子 石田大 小河原康二 窪田史恵 河野早紀 小林洋平/美術:杉山至+鴉屋(3・4 除く)/衣裳:堂本教子(4除く)/照明:藤原康弘/音響:堂岡俊弘/舞台監督:大鹿展明/制作:小森あや 田嶋結菜
2本のゲストパフォーマンス
舞台作品から台詞を取り除いてみたら? 身体表現と音楽という演劇とは違うジャンルでパフォーマンスを続ける2組のアーティストをアンダースローに迎え、彼らの作品を通して、言葉なしで時間と空間を共有することの可能性を探究します。その表現の根底にはどのような作法や魂胆があるのでしょうか。
2回のレクチャー
レクチャー1:挑発する演劇
演劇表現において対話(ダイアローグ)とは本来、〈たたかい〉である!? ロシア・アヴァンギャルドの旗手、また映画監督エイゼンシュテインの師として知られる演出家・メイエルホリド(1874-1940)の作品と思想をヒントに、演劇における対話、言論としての演劇について考えます。
日時:2015年6月27日(土)18:00〜21:00
登壇者:楯岡求美(神戸大学国際文化学研究科准教授)
1967年東京生まれ。専門はロシア文化・ロシア演劇。主な論文に「メイエルホリドの演劇性―チェーホフ、コメディア・デラルテとの出会い」「ナルキッソスの水に映る街ー劇場都市ペテルブルグ」「演劇における感情の伝達をめぐって―スタニスラフスキー・システム形成過程についての一考察」他多数。
レクチャー2:カルチベート宣言〜芸術なしでは生きられない
報告エッセイを書く前に、プログラム全体を振り返って疑問や感想を共有し、深める場を持ちます。批評という立場から〈演劇を食べてかみくだいて生きている〉お二人を迎え、見ることと書くこと、感じることと言葉にすることについて語ります。
日時:2015年9月23日(水・祝)18:00〜21:00
登壇者:藤原ちから(編集者・批評家)
1977年高知県生まれ、横浜在住。BricolaQ主宰。武蔵野美術大学広報誌「mauleaf」、世田谷パブリックシアター「キャロマグ」などを編集。主に舞台芸術について様々な記事を執筆。共著に『演劇最強論』など。遊歩型ツアーパフォーマンス『演劇クエスト』を各地で創作中。
登壇者:森山直人(演劇批評家)
1968年東京生まれ。京都造形芸術大学芸術学部舞台芸術学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員、及び機関誌『舞台芸術』編集委員。KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)実行委員長。著書に『舞台芸術への招待』(共著、放送大学教育振興会)など。主な論文に、「沈黙劇とその対部――あるフィクションの起源をめぐって」他多数。
レクチャーはカルチベート・プログラム参加者以外の方も受講可能です。
地点WEBよりお申込みください。定員あり。参加費:500円/回
*2015年5月16日(土)より受付開始