2013 アンダースロー / 撮影:松本久木
ファッツァー
そして、俺は今、半分になった木の下で、俺たちのタバコを吸いつくす。俺はもう戦争をしない。ここに来てよかった、この世界で俺が三分間、考えることができる場所に。そろそろ行こうか。
演劇の国にようこそ 三浦基
今日は「アンダースロー」に来てくれて、ありがとうございます。どうしてみなさんがここに居るのか詳しい事情は知りませんが、ここは稽古をする場所としてつくりました。ですから正確には地点の稽古場であり、そこで本番をするというのが私たち劇団のメンバーの意識です。それがすなわち「劇場」であるという考え方を持っています。このように劇団が劇場の住人であるという劇場は、まだまだ日本には少ないのです。世界的に見れば珍しくないあり方だと言っていいのですが。いずれ、みなさんがどうしてここに来たのかは自明で、ここが「劇場」だからに過ぎず、別に詳しい事情なんかないということになりますね。まわりくどい言い方を許して欲しいのは、それでもやっぱりみなさんがどうしてここに居るのか、私は感謝すると同時に訝しく思ってしまうのです。つまり、何を期待してここに来たのかということです。
もし、エンターテイメントを期待されている場合、はっきり言いましょう。期待してください。おもしろいですよ。
もし、アバンギャルドを期待されている場合、これも大丈夫です。難しいですよ。
他に何を期待しますか。今、この国で演劇に。この問いかけは、もしかしたらみなさんが私たちに向けて問うていることなのかもしれません。だからここに来ているのでしょう? それを見てやろうとしているのでしょう? そういう意地悪な期待に対して、私は演出家としてひとつの確信を持っています。「絶望」を描くこと。暗いですね。でもそこにみなさんが立ち会ってくれることはありがたいことです。私にとってそれが演劇の本質だと思っています。この集いに参加することは、ブレヒト流に言えば「団結」という言葉になるのでしょうか。さあ、大変です。みなさんがここに来た本当の理由は、「団結」するためだと私は言い出しています。でも安心してください。『ファッツァー』は団結に失敗する話です。そういう気分を味わっていただければ、私たちは「絶望」を共有したことになります。
とにかく、演劇の国にようこそ。
アナーキズムを通して国をつくる場が劇場だとすれば、最高だと思っています。
出典:当日プログラム
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2013日程・会場2013.10.26-11.24 アンダースロー作ベルトルト・ブレヒト翻訳津崎正行演出三浦基音楽空間現代出演安部聡子
石田大
小河原康二
窪田史恵
河野早紀
小林洋平
スタッフ舞台美術:杉山至+鴉屋
照明:藤原康弘
音響:堂岡俊弘
衣裳:堂本教子
舞台監督:大鹿展明
制作:田嶋結菜
制作協力:平田栄一朗主催・企画制作合同会社地点助成 -
2014日程・会場2014.1.30-2.3 / 3.26-30 / 4.5-6 / 9.6-7 アンダースロー
2014.9.13-14 Gogol Centre(モスクワ) -
2015日程・会場2015.1.10-13 / 5.23-24 / 6.12-15 アンダースロー
2015.6.5-6 蓬蒿劇場(北京)南鑼鼓巷演劇祭正式招待(北京公演) -
2016日程・会場2016.1.14-16 / 6.3-4 / 6.12-13 アンダースロー
2016.7.2 LOFFT (ライプツィヒ)
2016.7.8-9 Ringlokschuppen(ミュールハイム)
2016.11.5-6 上海话剧艺术中心 D6空间(上海)Fatzer Tage 正式招待(ミュールハイム公演)
ACT Shanghai International Theatre Festival 正式招待(上海公演) -
2017日程・会場2017.3.3-5 / 6.23-26 / 12.21-24 アンダースロー
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2021日程・会場2021.12.2-5 吉祥寺シアター出演安部聡子
石田大
小河原康二
窪田史恵
河野早紀
小林洋平
田中祐気 -
2022日程・会場2022.6.14-26 アンダースロー