アンダースロー UNDER-THROW

地点がアトリエ「アンダースロー」を京都・北白川にオープンしたのは2013年7月のことです。下手投げを意味する和製英語で、中原中也の詩「春の日の夕暮れ」にも登場するこの言葉は、戦後日本のアングラ演劇を彷彿とさせる名前でもあります。地下から劇場文化を発信するという気概を込めて命名しました。

元は「サーカスサーカス」「CBGB」といった名前で親しまれたライブハウスで、京都に逗留中だったデヴィッド・ボウイが度々訪れたとも聞いています。とは言え、地点がこの場所を引き継いだときには、残された家具類がまわりの空気ごと朽ちているような、文字通りの廃墟でした。

計画から施工まで、開場準備には1年半を要しました。アンダースローのことは、床の材質から壁の色まで、空間のすべてをミーティングで話し合って決めました。その意味で、この場所は、地点メンバー全員のアイデアや感性を体現した演劇空間です。アンダースローを印象づけるおそろいの赤い座面に貼り替えられた不揃いな客席や、建具のパッチワークの製作にあたっては、京都の古家具屋さんや椅子の張替を専門とされる職人さんに大変お世話になりました。

また、アンダースローでは、開場当時から「カルチベートチケット」という観劇互助システムを導入しています。ある人がカルチベートチケットを購入すると、別のだれかのために無料のチケットがストックされる仕組みです。この無料チケットを使って観劇を気軽に楽しんでもらいたいという思いから生まれました。

今後もアンダースローは、京都・北白川にひそかに残された演劇空間として愛されることを願っています。皆様のご来場をお待ちしております。