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劇団CHITEN

2010 うりんこ劇場 / 撮影:清水ジロー

お伽草紙/戯曲

  • #三浦基演出委嘱作品
  • #太宰治
  • #日本文学
  • #永山智行

ムカシ ムカシノオ話ヨ
ミギノ ホホニ ジヤマツケナ
コブヲ モツテル オヂイサン

作品概要
児童劇を専門に上演している名古屋の「劇団うりんこ」から演出依頼が舞い込んだ。演目の相談、オーディション、名古屋でのおよそ1ヶ月の滞在を経て、太宰治の「お伽草紙」を舞台化。戯曲は宮崎県「こふく劇場」の永山智行氏に依頼した。好評の初演を経て、2012年には再演ツアーも実現。日本の小説を舞台化していく作業は、その後、地点の『Kappa/或小説』『トカトントンと』『駈込ミ訴ヘ』へと展開していった。

みなさん、この劇は太宰治という作家が日本に古くから伝わるおとぎ話を自由に考え直して新しくつくった小説を元にしています。そこでは、例えばあの浦島太郎は助けてやった亀にひどく怒られたりもしています。どうしてそうなのかは、劇を見てのお楽しみですが、このように元々あるお話を考え直してみることを、むずかしい言葉で「批評」と言います。
さっき私は、この劇は太宰治の小説を元にしているといいましたが、つまり、この劇は、日本に伝わるおとぎ話を太宰が考え直したものを、さらに考え直したということです。どうしてこんなややこしいことをやるのかと言うと、私は、劇というものは、そもそも「批評」だと思っているからです。
太宰は戦争中、検閲のために自由な発言ができないとき、古典を題材にしてたくさんの小説を書きました。皮肉にもそれらは彼の作品の中でもたいへん優れたものになりました。このことは、芸術すらもある制約を課せられたときに力を発揮する、ということを意味しているのではないでしょうか。今日、私たちは目に見えるような明らかな制約の中に生きてはいません。特に今の日本において「目に見えない制約」について考えることはとてもむずかしいと思います。
この劇は、そんなことを考えながらつくりました。だから子ども劇のふりをしていますが、みなさんには分かりづらいと思います。でも大丈夫です。大人もあまりよく分かっていないからです。批評する相手のことを。これは、大人になれない大人のための、子ども劇なのです。

三浦 基
出典:当日プログラム 

  • 2010
    日程・会場
    2010.3.5-7 うりんこ劇場
    原作
    太宰治
    戯曲
    永山智行
    演出
    三浦基
    出演
    内田成信 
    越賀はなこ 
    丹羽美貴 
    高田博臣
    牧野和彦 
    にいみひでお 
    藤本伸江 
    川原美奈子
    花山ヨージロー
    スタッフ
    演出助手:佐久間晶子
    舞台美術:杉山至+鴉屋
    衣裳:ごとうゆうこ
    照明・音響:四方あさお
    音響オペ:新美豊
    イラスト:よしながこうたく
    フライヤーデザイン:京
    制作:安形葉子
    製作総指揮:平松隆之
  • 2012
    日程・会場
    2012.1.13-14 愛知県芸術劇場 小ホール
    2012.1.19-22 KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
    2012.2.1 アステールプラザ 多目的スタジオ(広島)
    2012.2.3-5 ぽんプラザホール
    2012.2.10-12 大阪市立芸術創造館
    2012.2.25 グリーンホール相模大野 多目的ホール
    2012.3.4 ハートフルホール(豊川)
    2012.3.18 まつもと市民芸術館小ホール
    出演
    内田成信
    越賀はなこ 
    丹羽美貴 
    高田博臣
    牧野和彦 
    にいみひでお 
    藤本伸江 
    和田幸加
    花山ヨージロー

劇評

仕掛け楽しい“夢の万華鏡”

たくらみのある芝居は面白い。劇団うりんこの「お伽草紙/戯曲」(太宰治原作、永山智行脚本、三浦基演出)は、脚本と演出それぞれの仕掛けだけでなく、原作そのものにもたくらみがあるから、幾重にも楽しめた。
太宰の「お伽草紙」は、おとぎ話を風刺の効いた大人の物語に仕立てた傑作。脚本はそれを、「親友交歓」など太宰のほかの小説も織り交ぜて、戦争とシビアな現実に囲まれた作家が、防空壕の中で見た白昼夢として描いた。「舌切り雀」や「こぶ取り」にある現実的な部分を「親友交換」などで膨らませ、それらとおとぎ話の世界を往復するつくりだ。
演出はまず、防空ずきんの男女が演じる形で戦争を強調。また人間関係をドライに演出し、作家の夢想が、高射砲の音だけでなく家族や友人などもう一つの脅威から現れるさまを見せていく。そして、ちゃぶ台の中に入った息子がカメになり、娘がウサギになり、幼なじみだと言い張る男がタヌキになって、現実から物語が生まれては消えていく面白さ。
さらに舞台脇に男を座らせ、全体が彼の夢かとも思わせる。男ははり合わせたザルにつないだロープを持っており、最後にそれを引いて作家を生け捕りにする。つまり夢想する作家と、それを冷静に作品にしようとする作家ということか。いずれにしろ、この二重三重の夢の仕掛けによって、まるで夢の万華鏡を見るようだ。そしてその万華鏡は、作家の孤独と強迫観念から生まれることも目の当たりにさせた。

中日新聞 2010.3.20
安住恭子

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