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劇団CHITEN

2017 KAAT神奈川芸術劇場 / 撮影:松本久木

忘れる日本人

  • #KAAT神奈川芸術劇場
  • #松原俊太郎
  • #ロームシアター京都
  • #愛知県芸術劇場
  • #コレット・ウシャール
  • #杉山至

椅子のない部屋、出口の封鎖された公園、坂の真ん中の我が家。
外へ逃れることが決してできない三つの場所、三つの時間。
いつものポピュリズム、こんにちは全体主義、世界同時多発(する)愚劣、ああイデオロギー。
マジックミラーにぐるりを囲われた糞ったれな今このとき、わたしとあなたのあいだに〈愛〉は可能なのか。

作品概要
アンダースローの雑誌「地下室」草号に連載されていた松原俊太郎の戯曲『忘れる日本人』を舞台化。結界に囲われた白木の小舟を祀る空間で、波にたゆたう日本人たち。〈だれ〉〈どこ〉〈なぜ〉を問いながら、断片的な記憶を語る彼らは、やがて乗船し、再び下船し、観客とともに神輿を担ぎ、最後には結界を壊してなお彷徨う。
  • 2017
    日程・会場
    2017.4.13-23 KAAT 神奈川芸術劇場〈中スタジオ〉 
    作 
    松原俊太郎
    演出
    三浦基
    出演 
    安部聡子 
    石田 大 
    小河原康二 
    窪田史恵 
    河野早紀 
    小林洋平 
    田中祐気
    スタッフ
    舞台美術:杉山 至
    衣装:コレット・ウシャール
    照明デザイン:大石真一郎(KAAT神奈川芸術劇場)
    照明オペレート:岩田麻里
    音響デザイン:稲住祐平(KAAT神奈川芸術劇場)
    音響オペレート:今井春日(KAAT神奈川芸術劇場)
    舞台監督:小金井伸一(KAAT神奈川芸術劇場)/斎藤亮介
    技術監督:堀内真人(KAAT神奈川芸術劇場)
    プロダクションマネージャー:安田武司(KAAT神奈川芸術劇場)   
    草の写真:石川竜一
    宣伝美術:松本久木
    制作:田嶋結菜
    主催
    KAAT神奈川芸術劇場
    助成
    平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
  • 2018
    日程・会場
    2018.6.21-24 KAAT神奈川芸術劇場〈中スタジオ〉
    2018.7.13-15 愛知県芸術劇場 小ホール    
    2018.7.18-21 ロームシアター京都 ノースホール
    出演 
    安部聡子 
    石田 大 
    小河原康二 
    窪田史恵 
    小林洋平 
    田中祐気
    主催
    合同会社地点
    愛知県芸術劇場[愛知公演]
    提携
    KAAT神奈川芸術劇場[神奈川公演]
    共催
    ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)[京都公演]
    後援
    京都市[京都公演]
  • 2019
    日程・会場
    2019.2.16-17 山口情報芸術センター
    出演 
    安部聡子 
    石田 大 
    小河原康二 
    窪田史恵 
    小林洋平 
    田中祐気 
    黒澤あすか
    主催 
    公益財団法人山口市文化振興財団
    企画・製作 
    山口情報芸術センター[YCAM]
    技術協力 
    YCAM InterLab
    後援 
    山口市
    山口市教育委員会
    助成 
    文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂機能強化推進事業)
    独立行政法人日本芸術文化振興会
    製作 
    KAAT神奈川芸術劇場
    合同会社地点

劇評

前作「みちゆき」がAAF戯曲賞(愛知県文化振興事業団主催)の対象を受賞した作者の松原俊太郎は、東日本大震災後の日本の針路をテーマにした前作以上に日本そのものを問い直す、三浦は膨大な戯曲のテキストの三分の一を構成。日本人の、戦後日本に対する忘却に関わる言葉を日本人役の俳優が紡いでいく。物語はないに等しく、独自の言葉が次々と発せられるさまは、三浦が取り上げるオーストリアのノーベル文学賞作家イェリネクの戯曲とも相通ずる。主人公は「日本」あるいは「日本人」という集合意識といえる。 俳優はサラリーマン風などさまざまな衣装の日の丸のワッペンを着け、船を囲む網の境界の中で曖昧に笑い、かに歩きで、ちょこまか動く。「わっしょい」と気勢を上げつつ船にしがみつき、船に乗っては落ちそうになる。客席に応援を呼びかけ、ようやく船をみこしのように担ぐ場面もある観客参加型の演劇だ。

島国という地勢的条件の中、見えない壁や他者を内面化できず、内向きに堂々巡りであたふたしながら共同体を維持している日本。日本人を、忘れる、あるいは忘れずに拘泥することすら意識しない夢遊病のような存在として問い直す舞台だ。

井上昇治
「中日新聞」2017年5月9日 

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