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劇団CHITEN

2015 にしすがも創造舎 / 撮影:山西崇文

ミステリヤ・ブッフ

  • #ロシア文学
  • #空間現代
  • #フェスティバル/トーキョー
  • #マヤコフスキー

どの本も死後の喜びを言葉巧みに約束した。
だが、俺たちはここで、この地上で暮らしたいのだ。
樅の木や、家や、道路や、馬や、草などより
高くもなく、低くもない所で。
品のいい甘い菓子にはうんざりだ、でっかい黒パンを食わせろ!
今日、劇場の埃の上に輝き始めるのは俺たちのスローガンだ、
「すべてを新しく!」

作品概要
空間現代との『ファッツァー』に続く二度目のコラボ作品として選んだテキストは、ロシア・アヴァンギャルドを牽引した詩人マヤコフスキーの代表作。仮設の円形舞台やフライングへの初挑戦、ミラーボールとスモークを多用した照明等、さまざまな演出効果を貪欲に取り入れてテキストに対抗。マイクを使用し最大限まで拡大された声と音量MAXの演奏によるラストシーンは圧巻となった。

革命断念劇ではない。 三浦基

『マヤコフスキー事件』(小笠原豊樹著)という本をどうして手にしたのか覚えていない。読み始めたら最後、その興奮は今でも冷めていないから不思議だ。簡単に言ってしまえば、この本は長らくの定説であったマヤコフスキーの自殺を、時の政府の粛正である、つまり他殺だったと主張するのである。状況証拠や隠されていた証言などを徹底的に解析する著者の情熱は、読む者を嵐に巻き込む。そして、何かに対する怒りと何かに対するあきらめのようなものを一緒に味わい、何とも言いがたい哀しみが残る。  

マヤコフスキーの死は、「事件」だった。私は、自殺にせよ他殺にせよ、彼の存在が「事件」だったと理解した。彼は、ロシア・アバンギャルドを代表する芸術家として台頭し、革命詩人とまで呼ばれる存在であった。しかし、ここで混同してはならないのは、彼の存在は、革命ではない、事件だった。何とも言いがたい哀しみの正体は、ここに潜んでいるのではないか。戦争ではない、内紛だった。という言い方にどれだけ意味がないか。いや、むしろ重要な意味があるのではないか。  

今、私たちがモスクワに行けば、巨大なマヤコスキーの銅像を見上げることになる。もし時の政府による殺人だったなら、今もその広場自体がないか、名誉回復までの時間をいまだに過ごさなければならなかったかもしれない。つまり、マヤコフスキーの死を自殺でおさめること、たかが事件でおさめることで乗り切ったと想像することは、むしろリアルですらある。マヤコフスキーの埋葬に、当時の民衆が道に溢れんばかりに参列している写真を見れば、もしこれが後に粛清されることになる演出家メイエルホリドのように、最初から殺されたとわかっていたのであれば、大変なことになっていただろうと思う。当時の民衆はマヤコフスキーの詩をひとつやふたつ、いや、彼は当時人気のポスター描きだったから、そのスケッチと文句は革命直後の人々の生活に浸透していたであろう、そんな彼が殺された? そんなことはあってはならないことで、時代の空気に自滅したという物語の方がおさまりよかったのである。ご存知の通り、やがてソビエトは崩壊した。ここでまた考えなければならないことがあると思う。ソビエトは自殺したのか、あるいは他殺だったのか、と。  

私がはじめて行った外国が、ペレストロイカ下のモスクワだった。街では、私の着ていたジャンバーはいつも引っ張られた。軍のバッジや帽子と交換してくれ、というのである(記憶をたどればそのジャンバーは、赤色のナイキだった)。ソビエトは、その内部から崩壊した。つまり自殺行為、自壊だということは、当時のモスクワの空気を思い出しても納得できる。  

しかしここで思い出さなければならない。マヤコフスキーは、『ミステリヤ・ブッフ』の出版に際して、今後上演する場合は、その時代に合わせて改編して欲しい、と言っている。なんということか。忘れるな、と言われているような気がしてならない。革命の悦びを。作者が改編を要求する貪欲さに対して、まずは敬意を表さなければならない。そして、大事なこと。それ故に彼はまだ死んでいないつもりなのだ、ということ。もっと大事なこと、今日、来てくれたみなさんに断っておかなければならない。これからご覧いただく芝居は、前述したようなマヤコフスキーの人生とはまったく関係していません。また、台詞の順番は変更していますが、基本的には内容を書きかえたりもしていません。原作通りにおもしろおかしく、できるだけ滑稽につくることにつとめました。でたらめなコントのようなものです。ですから、たくさん笑ってください。どうかお願いします。笑うことは、劇に参加することにほかなりませんから。協力してください。みんなで、彼を、本当に殺してあげたいのです。私たちの明後日のために。  

あなたは、沈黙するなり発言するなりしてください。でもそれは明日からにしましょう。今日は、無礼講ですから。

出典:当日パンフレット

 

 

  • 2015
    日程・会場
    2015.11.20-28 にしすがも創造舎
    ヴラジーミル・マヤコフスキー
    翻訳
    小笠原豊樹
    演出
    三浦基
    音楽
    空間現代
    出演
    安部聡子 
    石田大 
    小河原康二 
    窪田史恵 
    河野早紀 
    小林洋平
    スタッフ
    舞台美術:杉山至
    衣裳:堂本教子
    音響:西川文章
    照明:藤原康弘
    舞台監督:足立充章
    舞台監督助手:吉見祐司
    宣伝美術:松本久木
    制作:三竿文乃 喜友名織江(似上、フェスティバル/トーキョー)
    小森あや 田嶋結菜
    企画・製作
    合同会社地点
    共同製作
    フェスティバル/トーキョー
    主催
    フェスティバル/トーキョー実行委員会
     豊島区
     公益財団法人としま未来文化財団
     NPO法人アートネットワーク・ジャパン
     アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
    協賛
    アサヒビール株式会社
    株式会社資生堂
    助成
    平成27年度 文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業
    (池袋 / としま / 東京アーツプロジェクト事業、 池袋国際アートフェスティバル事業)

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